先日第153回日商簿記検定1級の合格発表がありました。
2級や3級とちがって1級は合格発表までに約2カ月の期間があります。税理士試験の合格発表より短いとは言え、なかなか待たされますね。
合格された方、本当におめでとうございます。会計人としての市場価値がグッと上がったと思います。
ここで勉強を辞めずにぜひ税理士試験の簿記論・財務諸表論にチャレンジしてみてください。きっとそこまで苦労することなく合格ラインまでいくことが可能です。
今回残念な結果だった方はここで諦めずにぜひ6月にまたチャレンジしましょう。
僕の後輩も今回で3回目の受験でしたが、合格まであと5点足らず残念な結果となってしまいました。
幸いにも本人は「次回は9割とって合格します!」と言っているので安心しましたが、簿記1級は試験が長期化してしまったり、途中で諦めてしまう人も多い試験です。
簿記検定に限りませんが、試験の長期化は勉強に対するモチベーションが低下しがちです。
勉強している最中に「あれ?本当に簿記1級取らなきゃダメなの?会社でもみんな2級くらいじゃん。新しく出たポケモンやった方がいいんじゃないの?」とふと思ってしまう時もあるはずです。
僕も勉強している最中は、そんなことを思ったりしていましたが、取得した今は本当に1級を取得してよかったと思っています。
今回は僕が1級を取得してよかったこと思うことを書いていこうと思います。少しでもみなさんのモチベーションアップに繋がりますように…
- 会社での評価がアップする
- 転職市場で武器になる
- お金がもらえる
- 業務が格段に楽になる
- 財務諸表が深く理解できるようになる
- 税理士試験にチャレンジできる
会社での評価がアップする

経理をやっていると「2級くらいは取ろうね」と2級くらい持ってる上司から言われます。
最近の2級は格段にレベルアップしていて1級との差も縮まっていますが、数年前は合格率も高く範囲も限定的だったので経理に配属されたほとんどの人が取得していたのではないでしょうか。
少なくとも僕の同僚は新入社員を除いて全員取得しています。
しかし1級を持っている人は上場企業の経理と言えどほとんどいません。
そんな中で1級を取得すると「え?1級とったの?まじ?」と、2級くらいを持っている上司からも一目置かれるようになります。
僕はメーカーで経理をやっていて、最初は工場のある超ド田舎に配属されました。工場に配属された弊社の新人はそこで7年~10年ほど過ごすことになります。

「フィールド魔法:荒野」並に田舎でした
1級をとったことが要因かは不明ですが、3年とちょっとで本社に異動することができ、連結会計を担当することになりました。
あのままド田舎の工場に居たら確実に転職していたので、2級くらいしか持っていない上司の割には英断だったでしょう。(突然の上から目線)
そして本社の経理で連結会計を担当している人でも1級を持っている人は少なく、「え?1級もってるの?まじ?」となります。
本社の経理にいると国際税務や申告業務などより専門性の高い部署へ異動することも容易になりますし、海外勤務のチャンスもグッと多くなります。
そのような業務につくと必然的に役員や役員候補の人たちと絡むことも多くなり、ド田舎で仕訳をポチポチ入れているだけの時より、評価を得るチャンスが多くなります。
転職市場で武器になる

「社内の評価なんてどうでもええわい!今は個人の時代じゃい!いやになったら転職すればいいんじゃい!」と言う方も最近は多いです。
営業職やSEとかだったら営業実績や自作のアプリを持ち込むことで実力が計れるでしょう。
しかし経理などの専門職はその場でなかなか実力が見えづらい。
「連結決算できます!!この場で消去仕訳やったりましょか!!」と言えないのが辛いところです。
そこで武器になるのが資格です。商工会議所によると1級は下記のような扱いです。
極めて高度な商業簿記・会計学・工業簿記・原価計算を修得し、会計基準や会社法、財務諸表等規則などの企業会計に関する法規を踏まえて、経営管理や経営分析を行うために求められるレベル。
合格すると税理士試験の受験資格が得られる。公認会計士、税理士などの国家資格への登竜門。(出典:商工会議所)
少し大げさな気もしますが、ここに実務経験が伴うとかなりの武器になることは間違いありません。
僕も超ド田舎からの脱出を試みて東京・大阪勤務が可能な会社の面接をいくつか受けましたが、実務×1級のコンボで面接はスルスル進みました。

闇道化師サギーと死のデッキ破壊ウイルスのコンボ(出典:遊戯用)
転職しようと決意したときを同じくして2級くらいを持っている上司から「本社異動な!」と串カツ田中で言われたのでギリギリ踏みとどまりました。
しかし転職エージェントと話していても「実務経験×資格はやっぱ強いっすねー」と何度も言われましたし、実際に面接でも結果が出ています。
お金がもらえた
これは会社によりますが、お金がもらえました。受講した大原の講座代金15万円に加えて5万円。計20万円もらいました。
受からなくても講座代金は補助してくれるという会社もあると思うので、講座代金で悩んでいる方は一度会社の制度を見てみるのもいいかもしれません。
受かってもらったお金はパーッと使ってもいいですが、次のスキルアップに使うとなおよいですね。僕は大きめの電子レンジを購入しました。(ヘルシオ
業務が格段に楽になる
会社では「上司の言うことは~絶対!」というのが基本ですが、経理のような専門職は上司の上に会計基準や税法などが鎮座しています。
2級くらいしか持っていない上司が意味不明な指示をしてきても「会計基準・法令にはこう書いてますよ~?」と言うと「せ、せやな!」と引き下がります。
また、大企業だと特に多いのでは、と思うのですが業務を引き継がれるときの糞ワード第一位「前からこうやってたんで」をよく聞きます。
その際に何もわからなければ「お、おう、そうなんか…」となってしまいますが、ある程度知識があると「なんでやねん」とツッコミを入れることが出来ますし、もし変な処理だったらそこで見直すことで評価にも繋がります。
変な処理でなくとも、会計知識があることで「ああ、ヘッジ会計ね。税効果の処理はこうしてるのね。はいはい。」と業務の呑み込みが格段に早くなります。
僕は本社に異動していきなり連結担当になりましたが、1級の知識がなかったらかなり苦労しただろうな…と思う業務ばかりでした。
財務諸表が深く理解できるようになる

1級レベルの知識が身についていると財務諸表も深いところまで読み込むことが出来るようになります。
「繰延税金資産がやたら多いけど本当に回収可能性はあるのか?」「投資有価証券が多いな、どんな構成か有価証券報告書を見てみよう」「ROEは高いけどROAは低いな。借り入れが多すぎ?」など一歩踏み込んだ財務諸表分析ができるようになります。
自社の財務諸表を見て、今後の業績は本当に大丈夫か検討したり、個人で投資する際も会社の財務諸表を読み込んで含み資産のある会社や業績の伸びが期待される会社に投資したい、という時にもとても役立つスキルです。
税理士試験にチャレンジできる
税理士試験にチャレンジするには以下のいずれかの受験資格が必要となります。
- 大学・短大・高等専門学校を卒業し、法律学または経済学を1科目以上履修した人
- 大学3年次以上で、法律学または経済学を1科目以上含む62単位以上取得した人
- 司法試験合格者
- 公認会計士試験の短答式試験に合格した人
- 日商簿記検定1級または全経簿記検定上級に合格した人etc…
文系の人だと大学で1つくらい経済学関係の科目をいつの間にか履修しているので、それで事足りることが多いです。
しかし成績証明書のどこを見ても法学・経済学っぽい科目が無い方や理系の学科卒、あるいは高校卒で働いている方は、上記だと実務経験か、日商簿記検定1級か全経簿記検定上級の合格が資格要件の候補としてあがってきます。
実際、僕の先輩にも1級を取得して受験資格を得てから税理士試験にチャレンジしようとしている方も居ますし、僕も初めて税理士試験を受験するときは日商簿記検定の合格証書を受験資格として提出しました。
1級の範囲は税理士試験の簿記論・財務諸表論と多くがかぶっていますので、勉強して損はありませんし、僕も1級を取っていたからこそ超短期で税理士試験の簿記論に合格することができました。
ちなみに公認会計士に受験資格はありません。高校生でも受験できますし、実際に合格しているバケモンもいます。
まとめ
日商簿記1級は間違いなく難関試験です。合格率は10%前後で低い時だと5%代ということも過去にはありました。
そのため何度も試験に落ちてしまい、途中で諦めてしまう人も多い試験です。
ですが1級を取得することは多くのメリットがあります。
特に会社での評価や転職市場での評価アップは生涯賃金アップに直結し、取得にかけたお金や時間の何倍にもなって返ってきます。
難関試験には圧倒的な勉強量も必要ですが、その勉強量を生み出すためにモチベーションが必要です。受かったあとどうなるか、どうするか、をたまにはイメージして勉強すると全く面白くない税効果会計も面白く感じることがあるかもしれません。
ちなみに税効果会計は捨て問にしてました!会計学で出なくてよかった!
日商簿記1級は難しい?働きながら半年で2級レベルから1級合格レベルまで到達するために必要なこと。工業簿記・原価計算が高得点のポイント。
Tchau!!
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