税理士試験は大きく会計科目(簿記論・財務諸表論必須)と税法科目(選択制)に分かれますが、一般的に会計2科目は税理士試験の登竜門とされ、会計科目の壁とも呼ばれます。
次に税法の壁、最後に法人税法の壁(※)が待ち構えていて、それぞれの壁が社会人受験生の心をへし折りに来るそうです(まだ何とか折られてません)。
※法人税法は実務上重要度が高く、税理士になる以上、避けて通れませんが、改正に改正を重ねた結果、複雑怪奇で膨大な範囲になっていて、かなりつらい科目なのです。
僕は平成最後の年に簿記論、令和最初の年に財務諸表論にそれぞれ運よく合格することが出来ましたが、同僚の中には何年も簿記論を受験し続けているものの合格できていでいたり、財務諸表論の理論が覚えられず、会計科目の壁に税理士への道を阻まれた人も複数人知っています。
それだけに、働きながら、しかもほぼ独学で会計科目に合格したことを伝えると職場内外で割と驚かれるとともに、どうやって勉強したかをよく聞かれます。
今回は僕の鳩並の脳みそが忘れてしまう前に、財務諸表論の勉強方法を中心に簿記論との比較や勉強中に気づいたことなどをつらつら話していこうと思います。
ちなみに簿記論については昨年下記のような合格体験記のようなものを書いていますので、よかったら見てみてください。(今年簿記論を受験する後輩が居るので、それまでにまた改めてまともな内容を書くかもしれません)
受験科目の選び方。受験の順番について。

税理士試験は試験時間が被らなければ複数科目受験することが出来ます。
特に1日目にある簿記論と財務諸表論は同じ会計科目と言うこともあり、同時に受験する人も多く、実際に勉強も相乗効果が期待できます。
しかしチャレンジを決めたのが受験しようとした年の1月でした。
予備校の先生とも相談し「1科目ずつ確実に撃破していこう、今年の簿記論がダメだったら来年2科目受験すればよい」ということになりました。
1科目目に簿記論を選んだのは「暗記がなく、短期間でも勝負できる」という理由ですが、これが当たり運よく合格することが出来ました。
そしてその流れで昨年は財務諸表論を受験することとしました。
勉強している途中は税法にもチャレンジしておけば良かったのでは、、という思いもありましたが、結局理論の仕上がりが試験直前までかかったため、結果的に1科目受験でよかったと思ってます。
働きながらだと、どうしても勉強に取れる時間が限られてしまうので、多くの受験生が簿・財同時受験しているからと言わずに焦らず1科目ずつ受験していくのも選択肢です。
簿記論と財務諸表論の違い
同じ会計科目の簿記論と財務諸表論ですが、分かれているだけあって違いがあります。
問題構成(簿記論は計算100%、財務諸表論は計算と理論が50%ずつ)が異なるのはもちろんですが、「問題の質」が大きくことなると感じていました。
簿記論はとにかく時間がありません。にも関わらず、かなり時間がかかったり、非常に難しい問題が頻繁に出題されます。
そのため、「これは捨てる」「これは絶対に正解する」といった取捨選択の力が大きく問われていると感じました。簿記が得意な人でも、手を付ける問題を見誤ると、大問をゴソッと失点してしまう、という緊張する試験です。
一方の財務諸表論は、理論こそまれに手が全く動かない問題があるものの、計算については毎年、ほぼ同じような内容、レベルの問題が出題されます。
簿記論のように、手を付ける問題を見誤ったために大問0点、となるようなことはなく、点数は安定しやすいです。
何より理論は暗記という努力がそのまま点数に結びつきますので、こちらも点数が安定しやすいです。
以上から、簿記論と比較して、財務諸表論は模試などで訓練を積むことで点数が安定し、本番でも焦らず実力を出し切りやすい科目だと感じました。
ちなみに、予備校のチューターによると、簿記論から先に受験する人の方が多いそうですが、財務諸表論の方が合格率は例年高く、難易度も財務諸表論>簿記論と感じるからが多いそうです。
僕も簿記論よりかなり余裕をもって合格できたのではないかと思っています。
財務諸表論の勉強方法
今回の記事のメインテーマですが理論と計算に分けて記載していこうと思います。
基本的に使用したテキストはヤフオクでゲットした過年度の財務諸表論のテキストと講義DVDです。講義DVDは全部は見ていませんが、理論の講義は2回ずつ以上は視聴したと思います。
理論については文字だけで読んでいても理解が難しいので、ここは予備校に頼るべきところだと思います。(僕はケチってヤフオクでしたが…
理論の勉強方法
理論は会計法規集の重要部分を理解し、暗記していくことにつきます。税法のように一字一句の暗記は不要ですが、ある程度の語句や言い回しは暗記が必要です。(でないと記号問題以外は解答できません…)
僕も多くの時間を理論の暗記に費やし、以下2点の方法で暗記を勧めました。
- 毎日必ず暗記用テキストに触れる
- 覚えられないテーマは講義を聴きながらメモリーツリーを半日かけて作る
これは僕が高校生の頃から大得意だった世界史でやっていた勉強方法で、この勉強方法のおかげで全国模試や京大模試で世界史だけ1桁順位だったこともあります。(自慢ですw)
まず①毎日必ず暗記用テキストに触れるというものですが、これは「暗記テキストに記載されていることは重要なことだよ」と脳を無理やり騙すための手法です。

常に持ち歩いていた理論テキスト
人間の脳は接触回数や思い出そうとする回数が多いと「あれ?この情報って重要じゃね?」と勘違いを起こしてくれます。
それを利用して、全く興味のない、面白くもない暗記用テキストと毎日ふれあい、読み、声に出し、ふとした瞬間に思い出し、ということをしていると、完璧な暗記ではなくとも、だいたいどんな内容が書いていたな、とかテーマによっては丸暗記出来ている場合もあります。
それに加えて②覚えられないテーマは講義を聴きながらメモリーツリーを半日かけて作るというのも効果的です。
メモリーツリーは受験漫画のドラゴン桜で有名になりましたが、マインドマップとも呼ばれます。
覚えたいテーマをセンターイメージとして置き、それに繋がる小テーマや用語を絵や色で強調して、イメージとして理論を覚えていきます。
実際に思い出すときはセンターテーマから芋づる式にキーワードを記憶から引っ張ってくることができます。

出典:ドラゴン桜。
僕はこれをヤフオクでゲットした講義動画を視聴しながら約半日~1日かけて固定資産や純資産、連結会計、などといったテーマごとに作成していきました。
全てを作成するのではなく、覚えづらいテーマはどうしても出てきますので、そういったテーマだけ作成するようにしていました。

自作マインドマップ。下手でも自分で作ると覚える。
個人的にマインドマップが作れれば暗記科目はかなり得意になります。
作り方を覚えるのと、実際に作るのが面倒ですが…。下記のような本もありますし、ググればマインドマップの作り方セミナー等も広く開催されています。
暗記で悩まれている方はおすすめです。
計算の勉強方法
計算については馬鹿の1つ覚えで恐縮なのですが「模試のやり込み」これに限ります。
簿記論もそうでしたが、模試をやって、答え合わせをして点数をつけるだけでなく正誤を下記の4つに分類します。
- 実力で正解した箇所
- すこし迷ったが運よく正解した箇所
- 本来の実力であれば正解できた箇所
- わからなかった問題
①はスルーして、②~④を中心に復習しますが、特に②・③の正答率を上げることが合格に繋がります。
簿記論も財務諸表論も全問正解する必要はありません。6割、ときには5割でも合格する試験なので、「取れるところを確実に取る」、そして確実に取れる問題を少しでも増やすことが大切です。
1点気を付けなければいけないのが、簿記論と異なって財務諸表論は勘定科目の記載方法、注記の書き方で減点になってしまいます。
簿記論はその点少し甘いので(勘定科目の表記に幅があります)、簿記論から受験した方は油断してしまいがちです。
これもテキストで軽く勉強・暗記したのちは、模試で微調整しましょう。
日々の勉強時間について
僕は日々の勉強時間は直前期の模試をやりまくる期間以外と、仕事がどうしても遅くなる時以外は、きっかり2時間と決めていました。
それ以上やっても集中力が続かないし、税理士試験はあくまで業務に役立つ自己啓発としてやっているので、日々の余暇がすべて勉強に取られてしまうのも、なんか違うな、と思っていたためです。
直前期だけは模試がそもそも2時間なので復習をするとどうしても3時間~かかっていましたが、それ以外の時期は2時間を、朝の出社前にカフェによって1時間勉強するのと、退社後にタリーズのワンモア珈琲140円でもう1時間だけ時間を取って勉強していました。
それ以外はTwitterしたり、投資情報を見たり、読書したり、嫁とごはんを作ったりと、別のことをやるようにしていました。
日本の社会人はほとんど勉強しないそうなので、2時間勉強してる僕はエライなーwとさえ思っていました。
(Twitter上での知り合った受験生たちはもっと勉強しているのを後で知りました…知らなくてよかった…)
ちなみに2時間の勉強も年明けくらいからで、それまでは講義をダラッと聞いて週に1回、総合問題を解くくらいでした。それくらいの勉強時間でも合格できたのは、毎日の2時間はスマホの電源を落としてがっつり集中して勉強していたからだと思います。
財務諸表論は税理士試験の科目の中でも1番難易度が低い、とも言われる科目ですが、それでも10%~20%の合格率で、間違いなく難関試験です。
財務諸表論に合格していれば、実務で役立つだけでなく、税理士試験の科目合格をもっている、という自信にもなります。
理論があることで少し敬遠されることもありますが、日々の積み重ねで必ず身につくものですし、そこまで完璧主義になる必要もありません。
Tchau!!
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