こんにちは。ruuutaです。
僕はボランティアで友人やその友人、会社の後輩などに簿記をおしえているのですが、最近不満が続出しています。
いや、僕の教え方がうんち、とかじゃなくて。いや、うんちかもせんけども置いといて。
「近年日商簿記2級の範囲が大幅に改定され、それに伴い難易度が大幅upしている」ということです。
会社の後輩に言わせると「あーーruuutaさんの時は連結もリースもなかったんでしょ??楽でよかったですねーーwwいいなーーww」だそうな。
「いや、ワイ日商1級持ってるし、税理士試験でリース会計とかチョロ問できへんかったら完全に致命傷やし(憤怒」
と非常にレベルの低い憤怒したことは置いといて、確かに以前と比較して範囲が拡大されました。
簿記が趣味の僕としては放っておくわけにはいかないので、まとめておきたいと思います。
せっかくブログやってるし、ブログ書きながら確認して後輩に詰め寄られても大丈夫にしておこうとかではなく、純粋なボランティア精神です。うん。
■目次
日商簿記検定2級とは

(画像をクリックすると商工会議所のページに飛びます。たぶん。
日商簿記とは財務会計・管理会計に関する最もポピュラーな資格の1つで、簿記2級を持っていると経理としての基礎知識があるとされています。
日商簿記は従来は1級~4級まであったのですが、最近は初級も追加されたようですね。1級が一番難しくて級が下がれば範囲も難易度も下がる、という感じです。
ちなみに日商簿記1級までとれば税理士試験の受験資格をゲットできたり、会社でもあんまりいなかったりして、ちょっと調子乗れますが、会計士や税理士を前にするとすぐに死んでしまいます。
さて余談ですが、上記のリンクをゲットするために久しぶりに商工会議所のサイトを開くと下記のような画像が。

なんか萌えキャラが日商簿記初級目指す、みたいな画像がありました。
「いや、アニメと言うか2次元の力過信しすぎちゃうか」「どういう層に訴求したいんや」と突っ込みたくなりましが、ちょっと可愛いのでOKです。
可愛いは正義、な?
日商簿記2級の受験者推移や合格率は下記の通りです。過去10回分引っ張ってみました。

(画像をクリックすると商工会議所のページで更に詳細な受験データを見ることが出来ます。たぶん。
2級は2月、6月、11月の年に3回受験できます。だいたい5万人~7万人程度の受験者でしょうか。
就職に有利だったり、会計士・税理士試験の最初の導入としても推奨されていることから結構な受験者数ですね。
合格率はかなりバラつきがあるので、受験して落ちても「うん、今回は難しかったんだな!次回がんばろう!」でいいと思っています。試験は4ヶ月ごとにありますし。
今回の改定点とポイントとなる範囲

本題に入りましょう。
「今回の改定点」と名うっておいてアレですが、いきなり大幅に試験範囲が増加したわけではありません。
28年度・29年度と2年かけて範囲が拡大し、現在は改正完了、という状態です。
詳細は必ず商工会議所のHPを確認いただきたいのですが、ズラッと並べると下記の通りです。
- 有価証券
- クレジット売掛金
- 手形
- 電子記録債権
- 三分法に加えて売上原価計上法の追加
- 有形固定資産の割賦購入
- 収益・費用認識
- 貸倒引当金の個別認識および計上
- 株主資本の変動の計数の変動
- 課税所得の計算方法
- 圧縮記帳(直接減額方式のみ)
- リース会計(借り手のみ)
- 外貨建営業債権債務の決算時換算
- 連結決算
たしかに多い・・・。なかでも赤線を引いたところがポイントかな、、と思った次第です。
ちょっとだけコメントしたいと思います。
有価証券
有価証券は従来の範囲では「売買目的有価証券」と「満期保有目的有価証券」のみが範囲でしたが、「子会社株式・関連会社株式」および「その他有価証券」が追加されました。
合併や事業譲渡・減損会計が範囲になっていれば子会社・関連会社もエグめの問題が出せるのですが、こいつらは基本的に取得原価でBS計上しておけばよいので簡単です。
問題は「その他有価証券」でしょう。そもそも「その他有価証券」が意味わかりません。なんだよ、「その他ってぇ…」。
実際問題に慣れてくるわかるのですが、本当に「その他」ですw 売買目的でも、満期保有目的でも、子会社・関連会社でもない有価証券。
具体的には10%くらいの持分で保有している投資有価証券などが当たりそうです。特に売却してキャピタルを得ようという株式でもなく、満期なんて存在せず、連結も持分法による損益取り込みも実施しておらず、というような有価証券です。
この「その他有価証券」は決算時に時価評価しなければなりません。実際に問題として出てくるのか不明ですが、今回の改訂点の目玉だと思っている「税効果会計」と組み合わせるとちょっと厄介な問題が作れます。
課税所得の計算方法
従来は税引き前純利益を算出した後に法廷実行税率〇〇%を掛けることで税引き後投機純利益を算出しており、法人税法上の益金と損金の差額調整に関するプロセスは問われてきませんでした。
今回の改訂によりそのプロセスの一部が問われるようになり、例えば「貸倒引当金は会計上は全額損金だけど、税務上は全額損金負算入ね」と言われたときに会計と税務で差額が生じてしまうため、それを調整する税効果会計の処理というものが必要になってきます。
今まではそれは聞いてなかったけど、これからは聞くからよろしくね!というものです。
これが結構厄介で、上述した「その他有価証券」や「圧縮記帳」なんかとも絡めることが出来ますし、法人税等調整額や繰延税金資産・負債なんかにも点数が配点されると芋づる式に点数が消えていく、なんてことが考えられます。
今回の改訂の目玉の1つだと思います。
圧縮記帳
問題としては直接減額方式のみなので税効果も絡むことがなく簡単ですが、新論点かつ名前が厳かなので。
補助金や保険金で固定資産を購入した際に、その金額分だけ取得原価から差っぴいてBS計上する、というものです。それを取得減価して減価償却を行っていきます。そのため通常よりBSも軽くなり、各期における減価償却費も軽くなる、というイメージです。
詳細はテキストなりを確認すれば一発だと思いますが、1級を受験される方は合わせて積立方式という方式が存在することもペラペラ見ておきましょう。
リース会計(借り手側の処理)
これが結構鬼門だったりするようです。そもそもリース取引自体に会計上の旨味がなくなって来ているので、実態として徐々に縮小はしているのですが、リース取引を行っていない企業は結構すくないんじゃないでしょうか。
リースとは所謂レンタルで、大企業であればコピー機や社用車なんかはほとんどリースのイメージです。どこで躓くかというと金利の計算が多いようです。
むしろそこさえ気をつければ取れる問題に変わります。
借手の処理のみで貸手側の処理やセールアンドリースバックなどという糞面倒くさくて、実務上あまり出くわさない問題は出題されないようなので安心ですね。
外貨建営業債権債務の決算時換算処理
難しい用語で捲くし立てられてる感が凄いですが、難しくありませんし、日本だけでお仕事してる企業も少なくなってきたので実務上覚えておくべきでしょう。
外貨での債権や債務、イメージしやすいのが輸出によって獲得した売掛金や逆に輸入によって負った買掛金などでしょうか。
これらを決算時の為替レートで換算しましょうね、と言うものになります。
問われるのは換算後の債権債務と換算時に発生する「為替差損益」でしょう。
為替差損益は、単純に債権債務額に取得時レートと決算日レートをそれぞれ掛け合わせて、引き算してやると差額が出てくるので簡単です。
連結決算
間違いなく改正の大目玉です。
現在の上場企業の多くは子会社を抱えていて、それぞれ財務諸表を作るのですが、それを合体させよう、というのが連結決算です。
連結決算は手順さえ覚えてしまえば簡単なのですが、結構覚えることが多くて、出てくる用語もよくわからんものが多いのでとっつきにくいです。
ただ2級の範囲としては、親会社から子会社に商品を売ったりするダウンストリームのみっぽい(と勝手に推測している)ので、非支配株主持分も仕訳の都度いじるアップストリームが含まれる試験よりはマシかなーと思っています。
ただ連結は最初の資本連結の際に処理を間違うと全問アウトになってしまう可能性があるので要注意です。
特に前述の税効果を絡めた問題が出てしまうと…おそろしい。。(経験済み
逆に消えていった範囲たち

ちなみに今回の改訂で逆に消えていった範囲もあります。
全て2016年度から適用されていていて、純粋に消滅したもの、3級や逆に1級に範囲が移動したものがあります。
(毎回簿記の問題は解いてるけど全く気づかんかったわ・・・
- 仕訳帳の分割(消えた)
- 伝票の集計(2級→3級)
- 保証債務の処理(2級→1級)
- 為替手形(消えた)
- 特殊商品売買の処理(2級→1級)
- 繰延資産の処理(2級→1級)
- 大陸式決算法(消えた)
- 社債に関する処理(2級から1級)
- 本支店会計の未達事項・内部利益の処理(消えた)
特殊商品売買に関する処理や本支店会計の一部など理解し辛い範囲が消えたのは朗報ですね。
一方伝票の集計なんかは従来の得点源だったのでちょっと悲しい…という感じでしょうか。
これも実務上の重要性から消えていった、という印象があって「意外にしっかり考えてるやん、商工会議所」と上から目線で思いました。
ちなみに大陸方式なんて未だによくわかってません。使わんやろ。。
【最後に】範囲は増えても結局そんなに難しくない、理解を深めようというはなし。

日商簿記2級は「就活動で有利になるからとっておけ!」くらいの扱いがされてしまうくらい、範囲も限定的でしたし、そこまで簿記や会計基準なんかを理解していなくても解き方を暗記してしまえば合格できてしまうような試験でした。
今回の試験範囲改定では難しくなった、範囲が増えた、合格し辛くなった!と受け止められがちですが、収益認識基準なんかは近年流行のIFRSでも重視されていて、弊社の経理部でも実務上、非常に話題にのぼっていますし、上場企業では税効果や連結会計を導入していない企業はほとんどないと言っても過言ではありません。
むしろ今までの2級の範囲が足りていなくて、それが1級にしわ寄せされていた、という感じではないでしょうか。
従来からの試験範囲および今回の改正点をおさえることで、より実務に即した内容を理解することが出来ると思いますし、1級や税理士試験へのステップアップのハードルも下がると考えています。
また問題の難易度という意味ではそれほどあがっていなくて、仕訳1発で回答が出たり、それほど複雑な計算を求められているわけではなく、あくまで「各範囲の基礎がわかってまっか?」という問いがほとんどです。
日商簿記検定は会計士試験や税理士試験と違って、時間が足りなくなる試験ではありません。
テクニックに走るよりは、せっかくなので各範囲に時間をとって向き合ってみてはいかがでしょうか。
なんとなく税効果や連結会計のことがわかっていると、営業や企画でもかなり重宝されますし、何より経理とのやりとりが非常にスムーズになります。
あ、為替換算調整勘定とかについて詳細ゴリゴリ詰めてくる企画の人はキライです。そこは適度にたのむ。
長くなりましたが、最後にオススメのテキストだけ。
僕がボランティアで教えるときはとりあえずコレをオススメしています。今回の試験範囲改定にも対応しています。
あとは残っている時間にもよりますが、模試形式をいくつか買って間違ったところを復習する、というアウトプット重視の戦略です。実際に教えるときは会計法規集も引っ張り出すんですが、まぁこれは「試験に受かる」という前提で考えたときには不要かもしれません。
また理解を深めて1級や税理士試験などにチャレンジしたい、と言う人は資格試験の予備校やネットするクールを検討するのもよいと思います。
最近は資格スクエアなんかが安くて便利ですよね。誰かに教えてもらったほうが理解が出来る、というのは自分が資格スクールを利用した経験があることから間違いありません。ちょっと費用はかかるけどそれに見合った効果があります。
個人的に分記法と売上原価対立法は抹消して良いと思ってます
分記法は初学者の理解の観点から残したほうがいい。
それより、総記法はマジで要らんと思う。古の記帳法だし、前T/B貸借が意味を持たない。